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2022.03.29災害対策における地質調査の役割

災害大国である日本において、地質調査の役割は非常に大きいものです。では、地質調査とはどういった仕事なのでしょうか?

地質調査とは、調査する土地の地盤強度や地質などを調べて分析を行う仕事です。分析を行うことで土砂災害や地震による危険性を把握できるため、地質調査は防災対策において、非常に重要な役割を果たしています。

例えば、ハザードマップの作成などです。

この記事では、上記のような災害対策における地質調査の役割について、より詳しく解説していきます。地質調査を行う地質調査技師への転職や就職を検討しているなら、この記事を参考にしてください。

日本の災害状況

日本は世界でも有数の災害大国です。位置や地形、地質、気候などの条件から、「台風・豪雪・豪雨・洪水・地震・津波・火山噴火」などのさまざまな災害が発生しやすい環境にあります。

実際、内閣府の防災情報ページに公表されている「災害を受けやすい日本の国土」によると、世界全体に占める日本の災害発生割合は、非常に高いです。

具体的な数値は以下になります。

  • マグニチュード6以上の地震回数8
  • 活火山数7
  • 死者数4
  • 災害被害額18.3%

出典: 災害を受けやすい日本の国土 : 防災情報のページ – 内閣府

上記のように、日本は国土面積が世界の0.25%しかないにもかかわらず、災害の発生や被害が非常に多く、正に災害大国と言えます。

大規模地震

日本における最大の災害リスクが地震です。過去に大規模な地震災害が多数発生しており、直近15年間でも「2011年の東日本大震災・2016年の熊本地震・2018年の北海道地震」が起きています。

出典:日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)

特に、2011年の東日本大震災は地震による被害だけでなく、地震によって引き起こされた津波によっても多くの被害が出てしまいました。

しかも、上記のような大規模な地震は、今後も発生すると予測されています。具体的には「首都直下型地震・東海南海地震」などです。

既に起きた地震でもそうですが、これらの地震で起きる被害は多くの死者や負傷者だけではありません。家屋の倒壊や液状化現象よる建物の傾きなど、建物の被害も非常に多いことが予想されます。

このため、地質調査をしっかりと行い、地震に強い建物を建造することが重要です。

台風や大雨

近年では台風や大雨による洪水や土砂災害などの災害が頻繁に起きています。

具体的には、「20187月の西日本豪雨・2019年の台風19号・2020年の台風10号・20217月の静岡県熱海市の土砂災害」などです。洪水や土砂災害が発生したことによって、死者や負傷者が発生しただけでなく、多くの家屋が被害に遭いました。

出典:気象庁 | 災害をもたらした気象事例(平成元年~本年)

上記のように、近年の日本では、ほぼ毎年「大規模豪雨・台風」による被害が発生しています。このため、台風や大雨などの災害に対する対策を行うことも、非常に重要です。

災害に対する対策

先述しましたが、災害大国である日本は、地震や台風などの災害に対する対策が必要不可欠です。

しかし、一言に災害に対する対策といっても、防災グッズを用意するといった家庭で簡単にできるものから、洪水が起きないようにする河川の治水工事まで、大小さまざまな対策があります。このため、個人はもちろんのこと、企業や国が一体となって災害対策を行うことが重要です。

個人・企業・国が一体となって行うべき災害対策を、3つピックアップして紹介していきます。

地盤調査

地盤調査とは、地盤の強度や土質などを調べて「その土地が耐えることができる重さ」など、建築をするために必要な情報を調べる調査です。住宅やビルなど建物を建てる際には、地震による被害を軽減するためにも、地盤調査が必要不可欠になります。

例えば、調査した内容から、「地震によって建物が傾く可能性」や、「液状化現象が発生するのか」などを知ることが可能です。さらに、土地の危険性がわかることで、災害によって建物の倒壊や損傷が起きないように、地盤改良などの対策を取ることができます。

このように、地震による被害を抑えて人の命を守るためにも、地盤調査は非常に重要です。

耐震診断

地震に対する対策として、有効なのが建物の耐震性能を診断するのが耐震診断です。耐震診断を行うことで、診断した建物がどのくらいの規模の地震に耐えられるのかがわかります。

例えば、「阪神・淡路大震災」クラスの震度6強の大規模地震によって倒壊してしまう可能性がある場合には、耐震性能が高いとは言えないため、耐震補強工事などを行なって耐震性能を高くすることが必要です。

地震による建物の倒壊を防ぐためにも、耐震診断を行なって耐震性能を把握したうえで、耐震補強工事など適切な対策を取ることが重要になります。

ハザードマップの作成

ハザードマップとは、自然災害による被害を抑える目的で、「被災想定区域・避難場所・防災関係施設の位置」などを示している地図のことです。主に防災対策として利用されており、避難経路の作成や被害予想などさまざまな用途で使用されています。

出典:ハザードマップ | 国土地理院

なお、ハザードマップでわかる内容は、主に以下の7つです。

  • 洪水
  • 内水(大雨などが原因で下水道の雨水排水能力を超えてしまった際の浸水被害)
  • 高潮
  • 津波
  • 土砂崩れ
  • 地震(液状化現象を含む)
  • 火山

上記のような災害による被害が出る可能性が高い地域や、避難場所などを確認することが可能です。

ちなみに、ハザードマップの作成する際は、「地域の土地の成り立ちなどの歴史背景・過去の災害状況・地形・地盤」などを調査して作成します。そのため、ハザードマップの作成には、地質調査が大きな役割を果たしています。

災害に関連した仕事

災害に関連した主な仕事は、以下の仕事があります。

職種 内容
地質調査 地盤の強度や地質を調査して土砂災害や地震による危険性を調べる
耐震診断 建物の耐震性能を調査して地震による危険性を調べる
自衛隊 災害発生時に被災地派遣され、救助活動や給水など様々な活動を行う
医療従事者 被災した負傷者に対する対応など医療行為を行う
危機管理コンサルタント 地域防災計画の改訂や災害対応マニュアルの策定支援など、災害対策の計画・立案に関わる
インフラ系の職種 災害によって崩壊したインフラをいち早く復旧するための工事などを行う

上記の仕事は防災や災害時に大きな役割を果たします。ただし、あくまでも直接的な職種です。実際に災害発生した際は、運輸業や小売業など、さまざまな仕事が被災地や被災者のために支援を行うため、災害に関係する職種は多岐にわたります。

災害に対して地質調査が果たす役割

地盤調査や地質調査は、ハザードマップの作成や更新に寄与できるうえに、住宅の損壊を未然に防ぐことができるため、自然災害などから人々を守ることができる職種です。実際、20217月に静岡県熱海市で起こった土砂崩れの発生原因「大規模盛り土造成地」などを調査するためにも、地質調査は使われています。

このように、地質調査や地盤調査の重要性は高まっており、それに伴い地質調査技師の需要も高まる一方です。したがって、地質調査技師は今後も、活躍の場が増えていくと予測されています。

まとめ

地質調査は、ハザードマップマップの作成や地盤調査などに使われ、災害大国である日本において重要な役割を果たしています。そのため、地質調査を行う「地質調査技師」は、災害対策において必要不可欠な人材です。

今後もその需要は増していく可能性が高いうえに、社会への貢献度も高いため、おすすめの職業と言えます。

災害対策や社会貢献に興味がある方は、就職や転職で「地質調査技師」を検討してみてください。