新着情報

2025.12.03初心者でもわかるボーリング調査の作業手順と流れ

 ボーリング調査の目的

 設計のための地盤情報取得

建築物や構造物の基礎設計を行うために、地盤の層構成・強度・液状化の可能性・地下水位などを明確にすることがボーリング調査の主目的です。設計者は得られたデータを基に基礎形式や地盤改良の必要性を判断します。

 施工計画と安全性の担保

施工段階での掘削、杭打ち、地盤改良などを安全かつ確実に行うために、地盤特徴を事前に把握してリスクを低減します。たとえば軟弱層や古地盤の存在は施工方法や工程管理に直結します。

 環境評価や汚染調査のための基礎資料

土壌の化学分析や地下水の評価を行う場合、採取したサンプルは環境調査の基礎資料となります。特定の化学物質の有無や汚染分布の把握に用いられます(該当する試験項目を事前に明確化)。

 既存情報の検証と追加調査の判断材料

既往の地質資料や周辺のボーリング情報と照合し、設計や施工の不確実性を減らします。既存資料で不足する点があれば追加掘削の範囲や深度を決める判断材料になります。

 法令・基準対応および報告義務の履行

公共事業や各種認可においては所定の調査や報告が求められることがあるため、規定に沿った試験や記録を残すことが必要です。調査記録は設計審査や監督機関への提出資料となり得ます。

 現場準備(位置決め・機材準備)

 調査位置の確定とマーキング手順

調査計画書に従い座標や距離で現地のボーリング位置を確定します。測量器具やトランシット、レーザー距離計などで正確にマーキングし、周辺の障害物や埋設物がないか確認します。位置は設計図と突合することが重要です。

 搬入経路と設置スペースの確認

掘削機・掘削台・トラック・資材置き場などの配置を事前に計画し、機材の搬入ルートや据付スペースが確保されているか確認します。狭隘地では小型機や仮設プラットフォームの検討が必要です。

 機材と試験機器の点検・準備

ボーリングリグ、オーガー、コアバレル、ハンマー、ケーシング、ハンディツール、ハンディスキャナ、サンプラー類、個人保護具などを出発前に点検・動作確認します。応急修理用の工具や予備部品も準備します。

 安全対策物と周辺措置の設置

作業区域のフェンス、立ち入り禁止表示、照明、消火器、保安具、遮音パネル(必要時)などを配置し、近隣への配慮(告知・実施時間)を行います。また、電源や排泥処理設備の準備も行います。

 関係者への事前説明と作業計画共有

発注者、設計者、施工者、近隣代表、監督員など関係者に対して作業範囲、スケジュール、安全対策、連絡体制を説明し、連携フローを確認します。緊急連絡先や中止判断ルールも共有しておきます。

 掘削開始からサンプル採取までの手順

 ボーリング孔の据付・ケーシングの準備

機材を所定位置に据え付け、掘削の基準線を確認します。表層の不安定な地盤や地下水の影響が懸念される場合は、孔壁保護用のケーシングを設置することがあります。ケーシングは孔安定や水の浸入防止に有効です。

 掘削の開始と深度管理(回転式・打撃式の操作)

掘削を開始し、掘削深度を段階的に管理します。回転式ではビットの回転数、泥水量、上げ下げ速度を管理し、打撃式では打撃回数と貫入深さを記録します。掘削の進行は定期的に記録を残します。

 現地試験(標準貫入試験・コーン貫入等)の実施

必要に応じて標準貫入試験(SPT)やコーン貫入試験(CPT)などを併用し、地盤の物理的特性を現地で定量化します。試験データは掘削ログと合わせて層の強度や密度を評価する基礎資料となります。

 サンプル採取の手順と注意点(撹乱防止)

採取器具を使い、指定の深度でサンプルを採取します。不撹乱サンプルが必要な場合は適切なリングサンプラー等を用い取り扱いに細心の注意を払います。採取時は向き・深度を明確にし、試料の撹乱を最小限に抑えます。

 コア採取とコアの保存処理(岩盤調査時)

コア採取の場合はコアバレルの管理、連続採取、コアの並べ替え・記録を行います。コアは乾燥や風化を防ぐため保湿やラッピングを施し、破損防止の梱包を行って現場から試験室へ運搬します。

 サンプルのラベリングと保管方法

 ラベリングの基本ルール(識別情報の明示)

サンプルには採取日時、採取深度(上下限)、サンプラー種別、採取者、現場コード、試験予定項目などを記載したラベルを必ず付与します。ラベルは耐水性・耐摩耗性のある素材を用いると現場での信頼性が高まります。

 サンプル容器と保護措置の選定

土質によって適切な容器を選びます。リングサンプルはその形状を保持する専用容器、コアは連続コアボックス、粉状サンプルは密閉容器など、試験に適した保持状態を維持できる梱包を行います。破損を避ける緩衝材も併用します。

 搬送時の温湿度管理と優先順位設定

サンプルの性状変化を抑えるため、必要に応じて温湿度管理を考慮します。特に有機物や水分が重要なサンプルは搬送リードタイムを短くし、優先試験項目は現場で速やかに発送する運用が望まれます。

 現場での台帳管理とデータ連携

採取データをサンプル台帳に記録し、写真や採取メモと紐付けます。台帳は紙媒体と電子媒体の両方で保持し、後工程の試験依頼と試験結果を追跡できるようにします。データは設計者や発注者と共有される重要情報です。

 長期保管と再試験対応のルール化

試験後に残る予備サンプルの保管期間、保管場所、再試験時の手順を定めておきます。保管期間や廃棄基準を明示し、必要になれば再現性のある再試験ができるよう管理しておきます。

 調査中の安全管理と注意点

 作業前のリスクアセスメントとKY活動

毎日の作業開始前に現場リスクを評価し、危険予知(KY)ミーティングを実施します。地盤の沈下、孔周辺の滑落、重機の転倒、近接作業の接触など想定される危険を共有し、対策を講じます。

 重機作業と周辺人員の動線管理

掘削機やクレーンなどの重機稼働時は、立入禁止範囲を明確にし、誘導員や監視者を配置して人員の誤侵入を防ぎます。夜間作業時は照明と反射材の活用で視認性を確保します。

 孔内ガスや有害物質の監視と対応

古い埋立地や汚染地域では孔内にガスや有害物質が存在することがあるため、ガス測定器や換気手段を用意し、異常検知時は直ちに作業を中止して対策を講じます。保護具の着用基準も厳守します。

 騒音・粉じん・振動対策と近隣対応

近隣環境への影響を最小限にするため、遮音シート、散水や集じん装置、低振動機器の導入、作業時間の制限、事前の近隣説明を徹底します。住民からの苦情対応窓口を設けると信頼維持につながります。

 緊急時対応計画と医療連携の整備

事故や急病発生時の対応フロー(救急搬送先、連絡先、応急処置手順)を現場で明確にし、救急キットやAEDの設置、近隣医療機関との連携を確認します。定期的な訓練も有効です。

 データ整理・報告書作成の流れ

 現場ログとサンプル情報の統合整理

掘削深度ログ、採取サンプル情報、現地試験結果、写真、観察メモを時系列で統合し、照合可能な形で整理します。データの欠落や矛盾がないかをチェックし、不足があれば現場に戻って確認します。

 柱状図作成と層序の解釈手順

得られたサンプルと試験結果を基に柱状図を作成し、地層の連続性、粒度、含水比、N値などをプロットします。地層の代表的性状をまとめ、設計者が必要とする情報を明確に整理します。

 試験結果の整理と評価コメントの記載

室内試験結果(強度、圧密、剪断等)を整理し、数値の妥当性を確認します。異常値や特異な観察があれば考えられる原因や影響をコメントに残し、設計段階での留意点を示します。

 報告書の構成と必須記載事項の確認

報告書は目的、方法、機材、採取ログ、試験結果、解析・評価、結論・提言を体系的にまとめます。図表や写真を適切に配置し、第三者でも理解できるよう整合性のある文書化を行います。

 データ引継ぎと設計者との協議

報告書提出後は設計者と結果について協議し、必要な追加調査や設計上の留意点をすり合わせます。設計変更が生じる場合は、調査データに基づく根拠を示して決定をサポートします。

 まとめ:効率的な作業手順のポイント

 事前準備と計画性が成功の鍵

調査前の入念な計画、適切な位置決め、機材・資材の準備が現場の効率と安全を大きく左右します。想定外の事態を減らすために、現地情報の収集と関係者合意を重視しましょう。

 標準化された手順と記録の徹底

採取手順やラベリング、台帳管理、品質チェックを標準化して運用することで、データの信頼性が向上します。誰が見ても追跡可能な記録を残すことが重要です。

 安全最優先の運用と近隣配慮

作業効率を追うあまり安全や環境配慮を疎かにしてはならず、適切な対策とコミュニケーションにより地域との信頼関係を保ちながら進めることが求められます。

 柔軟な現場対応と段階的調査の活用

現場での想定外の地盤が判明した際は段階的に調査深度や手法を変更する柔軟性を持ち、重要箇所に資源を集中することでコストと精度の最適バランスを図ります。

 最後に:信頼性あるデータが安全な設計を支える

丁寧な作業手順と確実な記録管理により得られたデータは、設計と施工の安全性を支える基盤です。初心者であっても基本手順を守り、専門家と連携することで高品質なボーリング調査を実施できます。