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2022.07.27地質調査技師とは?地質調査業界の将来性や地質調査技師について千葉県の地質調査会社が徹底解説

近年、大規模な災害が増えている影響から日本では地質調査の仕事が注目されており、それに伴い「地質調査技士」にも注目が集まっています。
それに伴い、地質調査技士の仕事内容や地質調査業界の将来性について知りたいという方も増えてきました。

このため、この記事では地質調査業界の将来性や、地質調査技士の仕事内容について分かりやすく解説していきます。
地質調査業界に興味のある方は参考にしてください。

明治時代に地質学が普及し始める

明治時代から始まった地質調査業界の歴史の中でも、重要な変化が起きたポイントが何点かあります。
現在の地質調査業界の状況を把握するためには、地質調査業界の歴史を理解することが要なため、ポイントを押さえながら紹介していきましょう。

地質調査は主に鉱山の開発に利用されていた

地質調査業界の始まりは「地質学」です。
明治維新から25年後の1893年に、鉱山や炭田の開発・土木事業の基礎などに役立つ学問として地質学が本格的に学ばれ始めました。
その後1893年に「日本地質学会」が設立されると、地質学は徐々に普及していき、地質調査も度々行われるようになっていきます。

地質調査は主に鉱山の開発に利用されていた

地質学が学問として学ばれ始めた当初は、日本の地質を調査し分析を行う学術目的の地質調査が実施されていました。
しかし、日本の近代化が進むにつれ、石炭や鉄鉱石などの鉱山資源を確保する必要が出てきたため、
「鉱山開発」を目的とした地質調査へと需要は変化していきます。

なお、1894年から1895年に渡り発生した「日清戦争」や1904年から1905年まで続いた「日露戦争」で領有した台湾や南樺太でも、国主導で鉱山資源確保のための地質調査が頻繁に行われていました。

関東地震によって防災のための地質調査が実施される

1923年に発生した関東地震は、東京市と横浜市で合計約2万8,000棟の家屋が倒壊し、死者・行方不明者が約10万5,000人という甚大な被害が発生しました。
この関東地震が発生したことで日本は、都市の地震に対する危機意識を持つようになります。

実際、地震の被害からの復興を指揮していた「復刻局」は、甚大な被害を受けた東京・横浜で本格的な地質調査を行い、地盤地質図を作成しました。
その後、地質調査は東京や横浜で留まらず、各都市でも実施されていきます。

終戦後はインフラ整備のための地質調査が行われる

1939年から1945年まで続いた第二次世界大戦に日本が敗戦した後は、
GHQに7年間占領されることになり、米軍基地建設のための地質調査が主に行われていました。

しかし、1947年に発生した「カスリーン台風」による利根川堤防の決壊で、地質調査の使用用途にさらに幅が出てきます。
利根川堤防の決壊では、民家が流されるなどの被害が発生したため、
治山・治水事業の必要性を喚起され、治水事業としてダム建設計画が策定されたのです。

しかも、治水事業としてのダム建設計画は全国で行われることになり、建設地点を決めるための地質調査が数多く実施されました。
その際、多くの地質調査技士が活躍し地質調査の必要性がより認められたことで、インフラ整備における地質調査の需要は徐々に増えていきます。
それに、1955年以降は鉱山開発が衰退して鉱山開発のための地質調査が減少したことが重なり、
地質調査の用途における土木建設工事に関わる地質調査の割合も年々増えていきました。

ちなみに、この時期に建設されたインフラは、高速道路や空港、新幹線などの鉄道、下水道など多岐に渡り、不動産事業も急速に拡大しています。

1960年以降は住宅などの建物を建設するための地質調査が増える

インフラが急速に整備されることで、都市部の不動産事業が拡大し、住宅やビルなどのさまざまな建物が建設されていきます。
建物を建築するための地質調査の需要も高くなり、地質調査を行う会社も増えていきました。

それに拍車をかけたのが、2000年に起きた阪神・淡路大震災です。
阪神・淡路大震災では、家屋が約10万5,000棟全壊し、約14万4,000棟半壊、死者も6,434名になる甚大な被害を受けました。

このため、建築基準法が見直され、家などを建てる際に地耐力を調べることが建築基準法上で求められるようになり、
地盤の強度を調べるための地盤調査が義務化されたのです。
こういった流れにより、現在では建築のための地質調査が、地質調査全体の約9割を占めるようになっていきます。

地質調査が社会で果たしている役割

地質調査は前述した歴史からもわかるように、地震による被害を防ぐなど、社会において重要な役割を果たしています。
ここでは、地質調査が社会で果たしている3つの役割について解説していきますので、地質調査がいかに重要かを理解してください。

事前に災害の危険性がわかる

地質調査を行うことで調査した土地に、以下のような災害の危険性があるのかを把握することができます。

  • 土砂崩れ
  • 液状化現象
  • 地盤沈下

したがって、ハザードマップの作成や避難場所の決定、建物の建築が問題なくできるかの判断を行う際も、地質調査は必要不可欠です。
地盤沈下が発生してしまう危険性がある土地に家屋を建ててしまい、
地盤沈下によって家屋が傾き倒壊してしまったといった事態を防ぐためにも、地質調査がいかに重要かを理解しておきましょう。

インフラの安全性を高める

現在の日本では、1960年代以降に建設されたトンネルや高速道路などのインフラの老朽化が進んでいます。
したがって、今後もインフラの修繕や更新は増えていくでしょう。

そして、老朽化したインフラの修繕や更新のためには地質調査が必要です。具体的には、
インフラ建造物が建っている土地の地質や地盤の強度などの調査、過去に実施している地質・地盤の調査結果の更新などを行わなければなりません。

上記のような最新の地質や地盤の情報を集めることで、
初めてメンテナンスを実施する際のリスクマネジメントや地震などの災害に耐えられるインフラ建造物を建設することが可能になるためです。
このことからも、いかに地質調査が人々の生活を支える重要なインフラの安全性を高めるのに役立っているのかが分かります。

ビルや住宅の安全性を事前に把握できる

地質調査で最も需要があるのが、住宅やマンション、ビルなどの建物を建築する際に実施する地盤調査です。
建築する土地の地耐力を調べることが建築基準法によって義務化されており、
建物を建築する際は必ずボーリング調査やスクリューウエイト試験などの方法で地盤を調査します。

そして、これらの方法で地盤を調査することにより、地盤の強度が把握でき、地震によって建物が傾くなどの安全性の問題を知ることが可能です。

ちなみに、地盤に問題がある場合は、地盤改良工事を行なって安全性を高めることができます。
日本は世界でも有数の地震大国であるため、地盤の強度を調査し危険性を把握したうえで適切な対策を行う必要があり、そのためには地質調査が必要不可欠です。

地質調査技士の概要

地質調査技士とは、地質調査や地盤調査のためのボーリング調査などを行い、地盤の強度や土質を計測する技術者のことです。
土砂災害や地震などの自然災害が増加傾向にある日本では、防災面から地質調査の需要が増しているため、地質調査技士の需要も増しています。

ただし、地質調査技士を名乗るためには、現場での実務経験や資格試験に合格する必要があるため、相応の努力が必要です。

地質調査技士試験の概要

地質調査技士の資格には、3つの部門があり、取得する部門によって専門とする調査内容が異なります。
部門ごとに受験資格や試験内容も異なるため、地質調査技士の資格を取得して就職や転職を考えている方は、
就職を検討している会社に合った資格を取得しなければなりません。

ここでは、地質調査技士の試験内容を部門ごとに分けて解説するので、内容をよく確認するようにしてください。

現場調査部門

現場調査部門は、ボーリング調査を行うための機器の操作について特化した資格で、
「ボーリング調査に関する機器を操作した現場経験が5年以上(専門学校の指定課程卒業者は2年以上)」の実務経験がないと受験することができません。

出典:地質調査技士とは? 検定試験 受験資格 登録更新制度 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会

なお、試験内容は以下の表で確認できます。

試験名

概要

科目

筆記試験

四肢択一式問題:80

①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識

②地質、測量、土木・建設一般等の知識

③現場・専門技術の知識

④調査技術の理解度

⑤管理技法

記述試験

記述式問題:1問または2 ボーリング作業、工程・安全・品質の管理

口頭試験

試験と対面式で行う

ボーリング調査を行なう上で必要な知識、経験

出典:資格制度のご案内 – 地質調査技士 | 地質関連情報WEB 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会
上記のように、現場調査部門に合格するためには、筆記試験だけでなく面接も必要になります。

現場技術・管理部門

現場技術・管理部門は、地質調査に関する管理業務や物理探査、土質試験などの計測業務に関する資格です。
受験するには、「5年または8年以上(大学や工業高等専門学校(5年課程)で環境・地質・土木等の課程卒業者は3年以上)」の実務経験が必要になります。
現場調査部門と違って特定の業務を行う必要はなく、地質調査業務であれば何でも実務経験にカウントすることが可能です。

出典:地質調査技士とは? 検定試験 受験資格 登録更新制度 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会

なお、試験内容は以下の表で確認できます。

試験名

概要 科目

筆記試験

四肢択一式問題:100

①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識

②地質、測量、土木・建設一般等の知識

③現場・専門技術の知識

④調査技術の理解度

⑤解析手法、設計・施工への適用

⑥管理技法

記述試験

記述式問題: 2

①倫理綱領に関する問題

②地質調査技術等に関する問題

出典:資格制度のご案内 – 地質調査技士 | 地質関連情報WEB 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会

上記のように、現場技術・管理部門は、他の部門では求められない解析手法の知識が必要になります。

土壌・地下水汚染部門

土壌・地下水汚染部門は、土壌や地下水汚染に関する地質調査に特化した資格です。
受験資格は、現場技術・管理部門と同様で「5年または8年以上(大学や工業高等専門学校(5年課程)で環境・地質・土木等の課程卒業者は3年以上)」の実務経験が必要になります。

出典:地質調査技士とは? 検定試験 受験資格 登録更新制度 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会

なお、試験内容は以下の表で確認できます。

試験名 概要

科目

筆記試験

四肢択一式問題:100

①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識

②地質、測量、土木・建設一般等の知識

③現場・専門技術の知識

④調査技術の理解度

⑤管理技法

記述試験

記述式問題: 2

①倫理綱領に関する問題

②土壌・地下水汚染調査の計画や現場技術、修復技術に関する問題

出典:資格制度のご案内 – 地質調査技士 | 地質関連情報WEB 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会

上記のように、筆記試験の内容は現場調査部門と同じですが、記述試験に関しては土壌や地下汚染に関する問題が出題されます。

地質調査技士の主な仕事内容

地質調査技士の主な仕事は以下になります。

  • マンションや住宅、ビルなどの建設現場の地盤調査や地質調査
  • 地震や土砂災害、液状化現象などの危険性を把握するための調査
  • 災害の危険性に対する対策の提案
  • トンネルや道路などのインフラ建造物の維持管理業務
  • 学術目的など土壌の状態を把握するための調査
  • 地熱などの資源を調べる調査

上記のように、地質調査技士の仕事は調査業務だけでなく、災害による危険性の把握や危険性に対する対策の提案なども行います。
とはいえ、会社によって具体的な業務は異なるため、
地質調査技士として転職や就職を希望している方は、事前に応募する会社の業務内容を確認しておきましょう。

地質調査技士の仕事の流れ

地質調査技士は以下の手順で仕事を行っています。

1. 地質調査を行う土地の地形や地盤図、古地図などの資料や周辺のエリアの資料を収集し情報を分析する
2. 実際に調査する土地を現地で歩いて分析した情報の差異や資料ではわからない情報を収集する
3. 物理探査を行って地質を調査する
4. ボーリン調査やスクリューウエイト試験など調査する内容や土地に合わせて調査方法を決めて調査計画策定する
5. 現地でボーリング調査などを行って地盤の強度や土のサンプルを採取する
6. 調査で得たデータから調査目的に合った内容を調べる(災害の危険性や建造物を立てる際の設計に問題がないかなど)
7. 分析したデータから報告書や提案書を作成する

このように、地質調査技士の仕事は現場での調査だけでなく事務仕事も多いです。
とはいえ、具体的な仕事内容は会社や調査内容によっても異なるため、上記の手順はあくまでも参考程度に考えるようにしてください。

地質調査技士が行う代表的な仕事である地盤調査とは

地質調査技士が行うことが多い地盤調査とは、ボーリング調査やスクリューウエイト試験などの調査方法で以下の内容を調査します。

1. 地盤が切土・埋め立て地など人口的に作成された土地であるかの確認
2. 地盤の強度の確認
3. 地盤の支持力の確認
4. 土質や土層の把握
5. 地下水位の把握
6. 液状化の状態の確認

上記の内容を把握することで、ビルや住宅が建築される土地の危険性を事前に把握して、地盤改良工事などの適切な対応を取ることが可能です。

ボーリング調査とは

地盤調査で行われるボーリング調査とは、地面を掘削して土を採取することで、地盤の強度、地盤種類、土質を調べる調査です。
他の調査方法では調べることができない土質を調査できるうえに、広い土地の調査に向いているといった特徴があります。

ビルやマンションなどを建てる際やインフラ建造物を建設する際に実施されることが多い調査です。

スクリューウエイト試験

スクリューウエイト試験は、「SWS試験」とも呼ばれており、一般住宅の地盤調で多く実施されている調査方法になります。
ボーリング調査のように掘削のための機械が必要なく、地面にロッドを打ち込むだけで地盤の強度が調べられるため、ボーリング調査と比較して調査時間が短く費用も抑えられるのが特徴です。

ただし、マンションの建設予定地など規模が大きい土地では正確性に欠ける点や土質が調べられない点など欠点も存在します。
ビルやマンションなどの地盤調査や液状化現象などの土質の把握が必要な調査には向いていないので注意が必要です。

地質調査技士と他の職業との比較

地質調査技士は、「調査系の職種」や「現場作業員」に分類されます。しかし、一般的にイメージするこれらの職種とは、仕事内容は大きく異なります。

地質調査技士と他の調査系の職種や現場作業員の違いについて解説しますので参考にしてください。

地質調査技士と他の現場作業員の違い

地質調査技師は、現場作業員の中では体力的に楽な仕事です。
現場作業員は鳶職や大工などのように、建設現場で力仕事を行う職種が多く、体力的にハードな職種も少なくありません。

その点、地質調査技士は報告書や提案書の作成、調査のための事前準備など、事務仕事や調査計画の策定などのマネジメント的な仕事が沢山あります。
もちろん、そういった仕事の大変さはありますが、体力的に不安がある人に向いている職種になります。

地質調査技士と他の調査系の職種の違い

地質調査技師は調査系の職種の中では、未経験の方でも仕事に就きやすい職種です。他の調査系職種と違い、現場で働きながら専門知識を学べるためです。

一方で、他の調査系の職種はデータサイエンティストなどのように、
高度な専門知識が求められるものが大半を占めます。実際、大学などで専門分野を専攻していない方や未経験の方には向いていない職種も多いで
す。

このことから、未経験の方で調査系の職種に就きたいという方は、地質調査技師を目指すことをおすすめします。

地質調査技士を勧める理由

地質調査技士への転職や就職を勧める理由は、主に以下の4つの理由です。

  • 住宅を建てるのに地盤調査が必要不可欠であるため仕事がなくなる心配がない
  • 災害の増加やインフラの老朽化に伴い需要が増しており将来性がある
  • 未経験の方でも現場で仕事をしながら目指すことができる職種である
  • 災害の危険から人々を守ることができる非常にやりがいのある仕事である

上記の理由から、地質調査技士は将来性があり、今後さらに活躍が期待される仕事です。
将来性のある仕事に就きたいという方は、ぜひ検討してみてください。

地質調査業界の今後の流れ

地質調査は今後さらに需要が増してくる仕事と言えます。
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土砂崩れにより、防災を目的とした地質調査の需要が高まっているだけでなく、
トンネルなどのインフラ建造物の多くが建築から50年以上を経過しており、今後メンテナンスや更新のために地質調査の需要が増えるためです。
それに加え、住宅やマンション、ビルなどの建築目的とした地盤調査の需要は変わらずあるため、地質調査の仕事は高確率で増えていきます。
このように、地質調査は今後ますます需要が増えていく将来性の高い仕事であるため、将来仕事に困りたくない方は目指してみてください。

まとめ

地質調査技士は災害の危険性や建物の安全性を把握するための重要な仕事です。
自然災害が増加傾向にある日本では、今後さらに需要が増えることが見込まれます。
このことから、地質調査技士は就職や転職を検討している方におすすめしたい仕事のひとつです。
しかし、詳細についてはあまり知られていない仕事であるため、不安を感じている方も少なくありません。
このため、この記事では、地質調査の業界の歴史や将来性、地質調査技士の仕事内容を解説してきました。
地質調査技士に興味がある方はこの記事を参考にしてください。