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2022.09.27地質調査の歴史と今後の見通しを徹底解説

地質調査の現況をより正確に把握するためには、地質調査の歴史を知っておく必要があります。

しかし、普通に生きていても勉強する機会は少ないため、地質調査に興味がある方は多くとも歴史について詳しく知っているという方は少数派です。

そこで、本記事では、地質調査の歴史や今後の見通しをご紹介します。

地質調査の現況を把握するためにも、しっかりと確認しておきましょう。

地質調査の歴史

明治時代からスタートした地質調査は、その時代のニーズに合わせて調査目的が変化してきました。

これらの変化を知ることで現在の状況をより理解することができるため知っておくようにしましょう。

明治時代に地質学が始まる

地質調査は明治時代の「地質学」からスタートしました。 1893年に「鉱山開発・土木事業の基礎」などに活かせる学問として地質学が一部で学習されるようになり、 同年に「日本地質学会」が設立、地質学は日本各地に広がり地質調査も行われるようになりました。

明治時代は鉱山開発の地質調査が実施された

当初の「地質学」は、日本の地質の特性を知るというのを目的とし、学術分野の地質調査が実施されていました。 しかし、日本の近代化や戦争によって石炭や鉄鉱石などの鉱山資源の需要が伸び、 「鉱山開発」での使用が活発になっていきます。 なお、「日清戦争」や「日露戦争」によって領有した「台湾」や「南樺太」でも、 鉱山資源を得るために地質調査が増加していきました。

大正時代に防災目的の地質調査が開始する

1923年に発生した関東地震により、防災目的の地質調査が開始されます。 この地震により合計約2万8,000棟の家屋が倒壊し、約10万5,000人の死者・行方不明者がという甚大な被害が発生したためです。 関東地震による被害を重く受けた政府は都市の地震に対する備えの必要性を理解し、 復興を主導していた「復刻局」に対して特に被害が大きかった「東京・横浜」エリアで地質調査を行い、地盤地質図の作成を命じました。 そのことを足がけに他の都道府県でも地盤地質図が作成されることになり、防災目的の地質調査が増加していきます。

昭和に入るとダムの開発のために地質調査が多く実施される

1947年に発生した「カスリーン台風」による利根川堤防の決壊を契機として、ダム建設地を決定するための地質調査もよく行われるようになります。 大きな被害が発生したことでダムの必要性が叫ばれ、治水事業としてダム建設計画が全国で計画されたためです。 これらのダム建設では多くの地質調査技士が投入され貢献したため、地質調査も注目され始めます。

1950年代からインフラ建設のために地質調査が実施される

1955年以降は「地質調査の重要性が高まった」ことや「鉱山開発が減少した」ことにより、 インフラ建設に伴う建設分野の地質調査の需要が高まっていきます。 さらに、日本が高度経済成長を迎えたことで、高速道路や空港、新幹線などのインフラ整備も急激に進んだうえに、 不動産事業も急速に拡大したため、さらに多くの地質調査が行われました。

平成に入ると地盤調査のための地質調査が多く実施される

昭和の後期から平成にかけて都市部の不動産事業が拡大し様々な建物が建設されるに伴い、地質調査の需要もさらに高まっていきました。 また、阪神・淡路大震災によって建築のための地質調査の重要性が見直されたことで、爆発的に拡大していきます。 この大震災で約10万5,000棟の家屋が全壊し、6,434名の死者が出る甚大な被害が発生したことにより建築基準法が見直され、 家などを建てる際に地盤の強度を調べるための地盤調査が義務化されたためです。 このような歴史的な背景により、現在は建築のための地質調査が地質調査全体の「90%」を占めている状態です。

令和に入ると防災のための地質調査の需要が高まっている

平成の終わりから令和にかけて、台風や大雨などの自然災害による土砂崩れなどの被害が毎年のように発生するようになります。 そのため、近況としては防災のための地質調査の需要が爆発的に増えている状態です。 例えば、2021年に発生した熱海の土砂崩れを受けて、政府は盛り土のあるエリアの地質調査を行っています。

今後の地質調査

ここまで、地質調査の歴史をご紹介してきました。 では、今後の地質調査はどうなることが予想されるのでしょうか? 今後の地質調査の見通しについて紹介していきましょう。

防災のための地質調査需要は高まっていく可能性が高い

2022年現在、防災のための地質調査の需要が高まっており、依頼も増え続けています。 温暖化などの影響が拡大していく可能性が高く、台風や豪雨などによる被害は今後も続くことが予測されるためです。 このため、すぐに地質調査の需要が大きく減るという事態は考えられません。

インフラ建造物の修繕や建て替えための地質調査需要が高まっていく可能性が高い

インフラ建造物の修繕や建て替えための地質調査需要も高まっていくことが予想されます。 建築から50年以上経過したインフラ設備が増えており、老朽化によって更新や修繕が増えていく可能性が高いためです。 このように、防災だけでなく土木工事のための地質調査も増えていくため、地質調査業界は今後も拡大していくことでしょう。

地盤調査の需要は減少する可能性が高い

インフラ設備や防災のための地質調査は増えていくことが予想されますが、一方で住宅を建築するための地質調査は減少していくことが予想されます。 株式会社野村総合研究所によると新設住宅着工戸数は、2021年度の「87」万戸から2040 年度には「49万戸」まで減少していくと見込まれているためです。
出典:2022年6月9日ニュースリリース(株式会社野村総合研究所)
このため、2022年時点で地質調査全体の「90%」を占める建築のための地質調査の割合は、減っている可能性が高いと言えます。 とはいえ、地質調査自体の需要が無くなることはないため、建築のための地質調査の割合は減っても案件数自体が大きく減ることはないでしょう。