2025.12.03ボーリング調査での土質判定方法とポイントを徹底解説

ボーリング調査で判定できる土質とは
砂質土の判定ポイント
砂質土は粒径が比較的大きく、水はけが良い特徴がある。層中の粒径分布や締固め状態によって透水性や支持力が変化するため、篩分析や現場のN値、粒度曲線を照合して層の性状を判定する。飽和状態や地下水位の影響も評価する必要がある。
粘性土(粘土・シルト)の判定ポイント
粘性土は含水比や塑性指数によって性質が大きく変動する。特に軟弱粘土は圧密沈下や後期沈下のリスクがあるため、不撹乱サンプルによる三軸試験や圧密試験の結果を重視して分類する。塑性区分(LL、PL)から取り扱い性も判断する。
礫質土や玉石混じり土の判定ポイント
礫混じり土は掘削抵抗が大きく、篩分析だけでは層判定が難しいことがある。粒度分布の上位側と層ごとの分布を確認し、コア観察や掘削時の抵抗変化を合わせて判定する。施工上の注意や基礎支持力評価で重要となる。
有機質土・腐植質土の判定ポイント
有機質土は有機含有率や色、におい、繊維状物質の有無で判定できる。圧縮性が高く支持力が低下しやすいので、有機物の比率を室内試験で測定し、改良や撤去の必要性を判断する。環境汚染物質の付帯検査も検討する。
埋立土や改良土の判定ポイント
埋立地では層厚や異物混入、締固めムラが問題となる。断続的な層境や異物層の識別、再生材や廃棄物の有無を調査し、層別に設計上の対応策を示すことが必要である。複数サンプルを用いた詳細評価が推奨される。
複合土質層の判定留意点
現実の地盤は単一特性の層ばかりではないため、混合層や急変層をどう扱うかがポイント。粒度分布、含水比、N値など複数指標を総合して層の代表特性を決め、設計に反映する柔軟性が求められる。
土質判定に必要なサンプルの採取方法

不撹乱サンプル採取の手順と注意点
不撹乱サンプルは土の自然状態を維持するための専用サンプラーを用いる。不撹乱性を保つために挿入速度・抜取り速度を管理し、リングサンプルは上下の境界を明確に保持して搬出する。採取後は直ちに封緘し、輸送・保管で乾燥や振動を避ける。
撹乱サンプル採取の方法と用途
撹乱サンプルは粒度・含水比など比較的耐性のある試験に用いる。オーガーやドリルで採取し、採取深度や採取時の手順を記録する。試験室での篩分析や含水比測定の精度を確保するため、容器は密閉性を高め湿度変化を防ぐ。
コア採取の実務(岩盤・固結層)
岩盤や固結層はコアバレルを用いて連続的にコアを回収する。コアの連続性、割れ目、風化程度を記録し、コア保持箱に順序を保って収納する。コア長の損失や割損を最小化するため、適切なビット選定と回転条件の管理が重要となる。
層別サンプリングの設計と深度間隔
サンプリング間隔は目的と予算で決定するが、主要な地層境ごとに代表試料を確保することが基本である。浅層は細かく、深部は代表的層に重点を置く。重要位置は追加サンプリングを行い、層連続性を担保する。
サンプル取扱い記録の徹底(ラベリングと台帳)
各サンプルに採取深度、採取方法、採取者、採取日時、試験予定を明記したラベルを付け、紙・電子双方の台帳で管理する。写真や現地観察メモを紐づけ、試験室での誤認防止を徹底する。
搬送・保管の管理基準と期限設定
サンプルは性状に応じた保管温湿度を管理し、特に有機質や湿潤土は速やかな試験が必要。再現性を保つため搬送時間や条件を記録し、試験優先順位を明確にして期限内に処理する。
土の分類方法(粒径・粘性・密度等)

粒径分類と粒度分布曲線の解釈
篩分析や沈降試験で得た粒度分布曲線は、土の透水性や支持力推定に直結する。D10、D50、D90など指標を用い、砂利混入や幅広い分布が示す挙動を把握する。粒度曲線の形状から土の充填性や締固め挙動を推定できる。
プラスティシティ指標(LL・PL・PI)の活用法
液性限界(LL)と塑性限界(PL)から塑性指数(PI)を算出し、粘性土の取り扱い性や圧縮性の指標とする。PIが高いほど粘着性が強く、支持力低下や体積変化のリスクが示唆されるため、設計値の補正が必要になる場合がある。
乾燥密度と天然密度の評価
現場密度試験や試験室での乾燥密度測定により締固めの程度や自然状態の密度を評価する。乾燥密度は層の締まり具合を示し、特に砂質土では支持力と密接に関連する。
比重と含水比の基本的関係
比重は土粒子自体の物性であり、含水比との関係で飽和状態や間隙率を推定できる。これらの基本値から圧密挙動や体積変化の傾向を数値的に把握する。
有機物含有率や腐植識別の方法
有機質土の判定は目視の色やにおいの他、揮発分測定や有機物含有率の定量で評価する。高有機土は強い圧縮性や分解に伴う体積変化が生じるため、改良・撤去の判断材料となる。
特殊分類(膨張土・火山灰土等)の取り扱い
膨張シルトや火山灰土など特有の挙動を示す土は、専用の評価指標や試験(膨潤率、長期強度等)を用いて判定し、設計上の特別措置を検討する。
土質判定に使う試験や分析方法
標準貫入試験(SPT)の運用と解釈
SPTは現場で広く使われる方法で、貫入回数をN値として土の締固めや支持力の指標に換算する。記録は貫入深度ごとに正確に残し、N値の補正や地盤特性との照合で評価する。注意点として礫混入や装置差がある。
コーン貫入試験(CPT)の実務的メリット
CPTは連続的に貫入抵抗を測るため、詳細な層判定や液状化評価に有用である。ポア圧計測との併用により飽和層の挙動を精密に把握できるが、硬質層や礫混入時の限界を理解して運用する。
三軸圧縮試験・一軸圧縮試験の適用範囲
不撹乱サンプルを用いた三軸試験は、せん断強度や圧密特性を定量化するための基礎データを提供する。粘性土の長期強度や短期強度を分けて評価し、設計に反映する。サンプルの取扱いが結果に大きく影響する。
粒度(篩・沈降)分析とその利用法
篩分析と沈降法で得た粒度分布は、透水係数や締固め挙動、液状化判定の基礎となる。篩の目開きと試験手順を厳密に守り、結果の信頼性を確保することが重要である。
液性限界・塑性限界試験の実務上の留意点
器具や試験手順に敏感なため、標準規格に従い実施することが重要。得られた塑性指数は施工性や体積変化の予測に有用で、土質判定の根拠として用いる。
土中水分・有機物・化学分析の応用
含水比や有機物含有率、pH、塩分など化学的な指標は、腐食性や腐植土の判定、汚染評価に繋がる。環境調査と連携する場合は適切なサンプル保存と分析計画が必須である。
判定結果の読み方と活用方法
柱状図の作り方と主要指標の読み取り方
柱状図は層序、粒度、N値、含水比、試験結果を一目で示すツールであり、層境の同定や重要層の把握に有効である。設計者が必要とする指標を強調して掲載し、可視性を高めることが重要だ。
支持力と沈下予測への反映方法
得られたN値やせん断強度を基に基礎支持力や沈下量の概算を行う。必要に応じて地盤改良案とその効果を評価し、コストと安全率を比較して最適案を提示する。
液状化リスク評価と対策案の立案
砂質で飽和する浅層がある場合は、液状化判定を実施し、孔内水圧やCPTデータで評価する。結果に応じて表層改良や排水処理などの対策案を設計段階で示す。
施工計画・機材選定への反映と注意点
土質に応じた掘削機や杭打ち法、基礎方式を選定する。たとえば礫混じり地盤では杭打ち用の特殊先端やプレミアムコンクリートなど、施工性に配慮した機材選定が必要だ。
保守・維持管理への情報提供としての活用
土質判定の結果は完成後の維持管理計画にも役立つ。沈下モニタリング箇所や透水対策の箇所を事前に設定し、将来の点検周波を設計に組み込む。
リスク考慮と設計上の安全率の設定方法
不確実性を踏まえた保守的な安全率の設定と、感度解析による重要因子の特定を行う。特に不均質地盤では安全率と経済性のバランスを明確にする。
調査報告書への反映の仕方
報告書の基本構成と読み手配慮
報告書は目的、方法、現場状況、採取サンプル、試験結果、解析、結論・提言の順で構成する。図表や写真を適切に配置し、設計者や発注者が速やかに判断できるように要点をまとめる。
柱状図・試験表の標準フォーマット例
柱状図は深度軸を基準に主要データを整列させる。色やシンボルを統一して視認性を高め、異常値や留意点は注記で明示する。試験表は項目ごとに規格値・測定値を載せる。
解析結果の根拠提示と計算式の明示
支持力算定や沈下予測など重要な数値は、使用した算式、仮定値、補正方法を明確に記載する。透明性が設計段階の合意形成を容易にする。
留意点・不確実性の明示と追加調査提案
調査で把握できない不確実性や想定外の層については留意点として明記し、必要であれば追加調査の範囲・目的を提案する。これにより設計者と発注者のリスク認識が一致する。
報告書の提出方法とデータ引継ぎの実務
電子データ(試験原票、写真、柱状図)を整理して納品し、必要に応じてデータベースへの登録や設計者向け説明会を実施する。データ形式やメタ情報を統一すると後工程での利便性が向上する。
法令・基準・規格との整合性の確認
公共工事や許認可案件では所定の報告様式や必須試験があるため、報告書作成時に規格との整合性を確認し、チェックリストで抜けを防ぐ。
まとめ:正確な土質判定のための注意点と実務的アドバイス

計画段階での目的明確化と試験計画設計の重要性
何を判断したいのかを明確にし、試験項目とサンプリング計画を目的に合わせて設計することが最も重要である。目的が曖昧だと余分な調査や不十分なデータが生じる。
現場での品質管理とコミュニケーションの徹底
採取・搬送・保管・試験の各段階で品質管理を実施し、現場と試験室、設計者間で情報を頻繁に共有することで誤解や手戻りを防ぐ。写真や現地メモは有効な証跡となる。
総合判断の重要性と単一指標依存の回避
SPTやCPTなど単一試験結果に頼らず、複数の試験・観察結果を組み合わせて総合的に判定する。各試験の長所短所を理解して重み付けを行う。
不確実性への備えと段階的調査の活用
重要構造物や高リスク地盤では段階的な調査を採用し、概略→詳細という流れで深掘りすることでコストと精度を最適化する。
報告書は設計の道具であるという自覚
報告書は単なる記録ではなく、設計者や施工者が使える「判断材料」として作ること。図表、注記、提言を明瞭にし、意思決定を支援する形で提供する。
最後に:現場経験と規格知識の両輪で高精度な土質判定を
土質判定は知識だけでなく現場経験が重要である。規格に従った試験実施と、現場判断を組み合わせることで、設計に耐えうる高信頼な土質情報を提供できる。
