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2024.09.20N値とは?ボーリング調査で出てくる用語について解説!

新規の建築をする際に欠かせないのが、これから建物を建てる場所が、どのような状態にあるのか調べることです。
一般的にはボーリング調査と呼ばれる手法によって、地盤の強度や性質を調べるのですが、説明には多くの専門用語が使われるため、理解が難しいのも事実。 地質調査の中でも重要なのが、その土地の強さを表す「N値」です。
N値を理解することで、その土地の状態を知るきっかけをつくることができます。 この記事では、地盤調査の重要用語であるN値を中心に、「安心して建築できるか」にかかわる用語を解説していきます。
合わせて、ボーリング調査に使われるさまざまな専門用語について、主要なものを分かりやすく説明し、より詳しい資料へのリンクも掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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N値とは

「N値」は、地盤の強さを表現するために広く使用される指標です。その箇所の土がどの程度硬いかを表したもので、作業を進める際の目安となります。

一方、戸建て住宅などの作業時には「換算N値」というものが用いられます。
これらの数値が何を表すのか、ふたつの基準の違いと合わせて見ていきましょう。

N値の概要

「N値」とは、地盤の強度を表す一般的な指標です。この数値が高いほど、その場所は安定していて、重量のある建物にも耐えることができます。

この数値は「標準貫入試験」によって測定されます。
なお、標準貫入試験は「ボーリング調査」とも呼ばれ、地盤調査において広く採用される手法です。

厳密には、ここで行われる作業はその土地の試料を採取することが目的ですが、通常、両者は平行して実施されるため、まとめて呼称されます。

この作業では、63kg前後の重りを約76cmの高さから何度も落とし、先端に取り付けたサンプラーが地面に30cm貫入するまでの回数を数えます。この回数がN値で、「N値が高い=地盤が硬い」と言えるのです。

換算N値について

一般的なN値とは別に、「換算N値」というものがあります。こちらは主に戸建て住宅の建築時に用いられるもので、前者と比較して簡易的な基準です。

換算N値は「SWS試験(スクリューウエイト試験)」によって測定されます。

この手法は、地質によって計算方法が異なるもので、土地の性質ごとに換算式を使いわけます。

なお、SWS試験とは、地表から10mまでの軟弱層と呼ばれる地層を、スクリューで掘り進めて、その土地の強度を調べる手法です。

ロッドの回転数とおもりの重量を換算式に当てはめることで、換算N値を算出します。こうして求められた値が、通常のN値に相当するものとして扱われるのです。

N値と換算N値はなにが違う?

ここでは、このふたつの用語の違いについて見ていきましょう。まず、前者は大規模な工事の際に採用されますが、後者は戸建て住宅などの、比較的小規模な現場に利用されます。

次に、コストの面での相違点です。

N値を測定するために実施される標準貫入試験は、費用目安が20~30万円、作業に2~3日程度を要します。

対して換算N値の算出に用いられるSWS試験は、費用目安8~10万円、作業時間も数時間程度で実施できます。

なお、地盤の状態や建設計画、あるいは検査結果からその土地に問題が発見された場合は、追加の検査をすることがあるため、上記の費用・期間はあくまで目安となります。

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N値の基準とは

地盤の強さを表すN値ですが、どれくらいの数値から「安心して建築できる」と言えるのでしょうか。

ここでは、数値の基準と、地盤の強さを示すもうひとつの数値である「長期許容応力度」について解説します。

安心して建築できるN値は?

通常、N値が「5以上」であれば、安心して建物を建てることができると判断されます。

ですが、実際はその土地の性質や状態によって判断目安が異なるのです。

重い構造物を支えることのできるものを「良質な地盤」と表現し、先に挙げた数値を満たしているものが該当します。

一方、粘性土の場合はN値20以上が、砂質土では30以上が「良質な地盤」と判断されるのです。

こうした特性を持つ箇所に対しては、内部摩擦角などを合わせて、その土地の強度を測定することが多いです。

また、数値が高くても地盤に脆弱な部分がある場合も珍しくありません。

これは新しい盛り土や腐葉土などで起こる現象で、作業を進めるにあたって地盤改良工事を要します。

このように、N値による判断は、その土地の状態や性質によって左右されるのです。

「長期許容応力度」について

建築基準法に定められた目安数値として、「長期許容応力度」というものがあります。

「許容応力度」というのは、簡単にいうと、ある場所が、どの程度の力を・どれだけの時間耐えられるかという指標です。

長期許容応力度は、その土地が、どれだけの重さに長いあいだ耐えられるかを表します。

この数値はN値から概算することができ、砂質土の場合は10倍、粘質土なら25倍が、おおよその数値です。

ただし、これだけではその土地の性質などがわからないため、通常はその他の検査結果を併用することで、総合的に判断していくことになります。

なお、この指標と対になる指標に、「短期許容応力度」があります。

こちらは地震や台風といった突発的な力に対して、建物がどれほど耐えられるかを表す数値です。

そのため、こちらはより高い数値となり、長期許容応力度を2倍にすることで概算できます。

ちなみに、建設の現場では「地耐力」という用語が使われますが、こちらは長期許容応力度と同じ意味です。

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ボーリング調査で使う用語について

ボーリング調査では、N値や換算N値、長期許容応力度以外にも、さまざまな用語が用いられます。
そのなかでも主要な用語について、いくつかを取り上げて解説します。

孔内積荷試験

標準貫入試験が地盤の縦方向への耐久度を調べるのに対して、孔内積荷試験は水平方向への強さを調べる方法です。

地面に開けた穴(ボーリング孔)の側壁に油圧やガス圧をかけることで、その場所がどの程度の力に耐えられるかを計測します。

滑らかなボーリング孔を掘削できる場所であれば、幅広く実施できる手法です。

現場透水試験

ボーリング孔に水を流入させ、水位が回復するまでの推移を調べます。
これによって、その場所に水がどのように通過するか(透水性)を知ることが可能です。

外部から人工的に水を注ぐ方法もありますが、通常は地下水を利用します。

また、地下水を揚水して、水位の変化を調べる「揚水試験」という手法もあり、こちらは地滑り地形に対して実施する手法です。

PS検層法(速度検層)

こちらは、ボーリング孔を用いて、地盤のP波とS波を計測する手法です。

その土地が持つ構造や特性といった力学的な特徴を調べる検査で、構造物の耐震性を確保するために欠かせません。

なお、PS検層法にはいくつかの実施手法が存在し、それぞれ異なる名称を持ちます。

密度検層

地盤の密度や地下水の有無を調べる検査が、密度検層です。
ボーリング孔内に放射線源とガンマ線測定センサーを設置して、ガンマ線の減衰を測ります。

なお、ガンマ線の減衰は、ボーリング孔の形状や地下の構造によって、数値が左右されることに注意が必要です。

ルジオンテスト

現場透水試験と同様、ボーリング孔に水圧をかけ、その場所の透水性を調べる手法です。

ただし、ダムによって高い水圧がかかる場所に対して実施されます。
大規模な建設時に、建物の位置を決定するのに役立ちます。

まとめ

「N値」は、地盤の強度を表現する方法として広く採用される指標です。標準貫入試験によって、重りをつけたサンプラーを地面に叩きつけ、一定の深さまで達するのに要する回数を数えます。

この回数がN値で、通常、5以上が「安定した地盤」として評価されます。
ただしこれは土地の性質によって目安がことなり、粘質土や砂質土などでは、より高い数値が必要です。

また、腐葉土や盛り土など、数値が高くても地盤が弱い場合があるため、その他の方法と合わせて、その土地の状態を総合的に判断しなければなりません。

より簡易的な目安として「換算N値」があり、こちらは戸建て住宅などをたてるときに採用され、SWS試験と換算式によって算出されます。
その土地が「どの程度の力を・どれだけの期間」耐えられるかという指標に「長期許容応力」があります。

地質によって計算方法がことなり、一般的に、砂質土ならN値の10倍、粘質土なら25倍で計算されます。

この分野には、その他にも多くの手法があり、多くの観点から建設計画を立案することが重要です。

ボーリング調査の用語を正しく理解することが、安心に繋がります。